「全人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty, TKA)の後の膝周囲のしびれはいつ無くなる?」
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty, TKA)って何?
島田 昇.人工膝関節置換術後患者に対する理学療法管理 から一部抜粋『変形性膝関節症(KneeOsteoarthritis:膝 OA) 患者は約2,530万人、有症者数は約800万人 1)と 推定され、60 代男性の約 40%、女性の約 60%が 膝 OA を有するとされている。膝 OA に対する手術 療法の一つである人工膝関節置換術(total knee arthroplasty: TKA)件数は年々増加し、現在では 年間 10 万件に上ります 2)』
参考文献
1) Yoshimura N, Muraki S, et al.: Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab 27(5): 620-628, 2009
2) 日本人工関節学会ホームページ TKA/UKA/PFA 人工関 節登録調査.
http://jsra.info/pdf/TKA20180331.pdf(2018 年 8 月27 日引用)
TKAの手術方法は?
①膝関節前面を切開
様々な切開方法があります。
- Medial Parapateller Approach
- Midvastus Approach
- Subvastus Approach
- Lateral Parapateller Approach
※よく使用される方法は上記2つ
②膝関節に人工関節を挿入
人工関節の種類も様々あります。
- CR(cruciate retention) 型
- PS(posterior stabilizer)型
- BCR(bi cruciate retaining) 型
※よく使用されるのは上記2つ
「中根邦雄.TKA で良好な可動域を獲得するには」から一部抜粋『TKA には,後十字靭帯(posterior cruciate lig- ament:PCL)を温存する CR(cruciate retention) 型と PCL を切除して脛骨上の post と大腿骨の cam により PCL 機能を代償させる PS(posterior stabilizer)型が主に使用されている.近年,前十 字靭帯 (anterior cruciate ligament:ACL) と PCL の両靭帯を温存する BCR(bi cruciate retaining) 型が使用され始めたが,まだ安定した成績が出ていない. 1.2)』
参考文献
1)中根邦雄,長谷川太郎,唐澤善幸,藤岡克博,寺田 聡史,山本隆博,丹羽滋郎:後十字靭帯温存型人工 関節置換術の成績向上のための手術手技とその考 察.医療法人大雄会病院誌
2)中根邦雄,丹羽滋郎,寺田聡史,山本隆博:CR-TKA における靭帯バランスについて.Monthly Book Or- thopaedics
何故、手術後にしびれが出ることが多いのか?
先程も出てきましたが、手術の際に膝関節の前面を切開し術野を展開しますが、この切開部分には伏在神経の膝蓋下枝が存在します。皮膚を切開した際にこの部分の神経も損傷するためしびれが出てきます。
『人工膝関節置換術(以下,TKA)後の疼痛の残存は,患者満足度を低下させる。疼痛の原因は様々であるが,伏在 神経膝蓋下枝障害もその原因の一つに挙げられている。TKA 後の伏在神経膝蓋下枝障害の発生頻度は 70~100% であり,その 症状は自然経過で改善している症例が多いと報告されている。一方,異常感覚や疼痛が強く術後満足度や日常生活に影響した重 症例は 4~10% に認められる。』
参考文献
人工膝関節置換術後に生じた伏在神経膝蓋下枝障害に対し神経腫切除術に至っ た5例
伊藤 直之1),久保 憂弥1),尾島 朋宏2)
1)福井総合病院 リハビリテーション課,2)福井総合病院 整形外科
神経の回復にはどれくらい期間がかかる?
神経の回復には個人差があるため、かなり明確な期間は記載できませんが、実際見てきた経験と神経回復の研究より、6カ月程度で概ね回復するのではと思います。
『電気生理学的実験は、切断された皮膚神経中の未熟軸索再生の側面を調べるために実施されてきた。同じ神経内の骨髄状軸索の再生をもたらすいくつかの比較もなされてきた。けがの後3ヶ月までに、近位切り株に生存していた未熟軸索の約80%が遠位の切り株に再生されていた。この時間までに同じ割合の脊髄化軸索は遠位の切り株に後退していた。両方の軸群とは、回復時間が長いと損傷部位を横切る再生量が著しく増加しなかった。再生された陰極化軸索中の伝導速度は、近位よりも損傷部位を横切って遅くなる傾向があった。近位伝導速度は対照神経におけるそれらと異ならなかった。暗硬化した軸索は、骨髄染色のものよりも皮膚を再供給するのに長い時間がかかるように見えましたが、両方の場合において、皮膚の神経支配の程度は損傷後6ヶ月までに約60%の管理値に達しました。』
参考文献
ラット伏在神経中の非環状軸索の再生の機能的側面
Journal of the neurological sciences 1987Sep01 Vol. 80 issue(2-3)
術後もし6カ月を超えても痺れなどがいっこうに回復しない場合は医師に相談することをオススメします。
TKAの術後しびれについて簡単に説明させてもらいました。
何かコメントや質問などありましたら、是非お願いします。
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